
■eラーニングの問題点とコンプライアンス教育
『eラーニング白書2007/2008』によれば、eラーニングの問題点は、以下の3点にまとめられている。
1.学習者に適したコンテンツの不足
2.講師や他の学習者とのコミュニケーションの不足
3.1、2に起因する学習者のモチベーション維持の困難
これより、情報(テキスト)を発信する側と情報を受ける側(学習者)との「コミュニケーション」に問題が特化されていることがわかる。この改善として、「学習者選択型コンテンツ」から、テキスト作成者・講師・教材管理者・学習者が一体となって作成する「協同型コンテンツ」や、学習関係者間の迅速なレスポンス、Webの頻繁なアップデート、コンテンツ内容の実践化(実務応用型)を伴う「学習者参加型コンテンツ」への飛躍が求められるのである。
これらの新しいコンテンツは、学習者の回答・質問、学習関係者の発言、講師の回答などを通して、リアルタイムに改善されることで進化していく。このような成果は「Q&A型」コンテンツに活かされ、そこから生じた問題意識が、従来のテキスト形式からブログ形式の「トピック型」や音声や映像を付加した「ポッドキャスト型」に反映されていく。そして学習者はコンテンツの充実とメディアの刺激を受け、「学習者選択型コンテンツ」から、学習のモチベーションを維持しうる「学習者参加型コンテンツ」を享受することが可能になる。
このようにして、現在詳細に展開されているコンプライアンス教育のコンテンツも、知識習得をめざす基礎編から、実務的な「応用編」「実践編」へと進化していくのである。
■コンプライアンスと社内コミュニケーション
そもそもコンプライアンス教育の目的は、企業のリスク管理を通して企業倫理の確立、企業の社会的責任を全うし、社会貢献までを視野に入れながら、一人ひとりの社員のモラル(倫理)とモラール(士気)を高め、リスクに強い企業体質を構築することにある。
しかし、企業組織は得てして、次のようなことが起こる。
1 指示・命令の歪曲
2 情報の断絶
3 組織機能が活性化しない
4 問題点が経営者に上がらない
5 問題が先送りされる
6 目標を達成できない
7 人材の滞留
8 組織力の低下
こうなれば当然、社員自身のモチベーションも下がり、事故や不祥事、また社員間の不和が事件化するリスクが出てくる。コンプライアンス教育は、コンプライアンス維持の「体制」が整えられ、社員の仕事への「モチベーション」が維持されることにより、組織内に浸透してゆくのである。そのため、コンプライアンス教育は社内の情報伝達、コミュニケーションの点検と改善を前提に進められなければならない。
一般に、人間はポジティブな感情よりも、「怒り」「嫌悪」「軽蔑」「悲しみ」「恐れ」「妬み」「諦め」などのネガティブな感情に支配されやすい。特に経営者には、こうした「社内感情」を押さえつけることなく上手くコントロールする必要から、日常の社内コミュニケーションを絶えず見直し続けることが望まれる。コンプライアンスに関わる感情で重要なのは、倫理観・価値観の基準となる「嫌悪」の感情である。好き嫌いが激しい人間は、嫌いな人間に対するコミュニケーションを閉ざし、他者に対する価値評価を誤り、過大または過少な評価を与えやすい。「好悪」の価値評価が社内に広まれば、公正さが遠ざけられ社内倫理は損なわれる。
次に重要な感情は「諦め」である。努力をしても報われない、公平な評価を受けられない、気に入られた幹部候補だけが昇進するなどの負の感情は、何をしても無駄という敗者の「諦念」となってあらわれ、正当な評価をも自己弁護で卑下するモラルの低下を蔓延させやすい。逆に、他者を過少評価する「軽蔑」や、他者を完全にコントロールできない不安から生ずる「恐れ」、自分にない他者の実績や能力に対する「妬み」は、人間の優越感情や劣等感情に基づくが、一方で冷静に自分の客観的評価を考える機会にもなる。大切なことは、優越感や劣等感が極端な「嫌悪」や「諦め」の感情に結びつかないようにすることである。人事評価に公正な基準がなく、経営者や幹部の「好悪」や「都合」によって左右される企業ほど、社内倫理は際限なく低下しやすいのである。