■08/03/03 【第59回】コンプライアンス教育の実際 第5回

■コンプライアンス教育とeラーニング
 コンプライアンス教育は、eラーニングなどの効果により、確実に企業に浸透しつつある。ビジネスリテラシー(インターネットセキュリティ・情報セキュリティ)、ビジネスコンプライアンス(消費者対応・企業間取引・企業法務・人事管理)、ビジネスマネージメント(労務管理・情報管理・知的物的財産管理)などの知識が、一般社員の基礎知識となりはじめているのである。

 NTTレゾナント/三菱総合研究所の「第7回ブロードバンドコンテンツ利用実態調査」(eラーニングユーザー調査):2007年8月22日発表では、eラーニングの利用効果について、「かなり効果があった」が7.8%、「やや効果があった」が44.4%と、利用者の半数以上から「効果」を確認することができた。しかし今後の利用意向については、現在eラーニングを利用している回答者の37.0%が「自分から進んで利用する」と回答した一方で、それより多くの49.6%が「会社・学校などの指示があれば、利用する可能性はある」と答えている。つまり、eラーニングの「効果」については評価が定着しつつあるものの、「持続」については動機を与えられなければ続かない傾向が見受けられるのである。そして、コンプライアンス教育の場合にさらに問題なのは、実際の現場において個人が習得した知識の効果が確認しにくいことである。

 コンプライアンス教育は、同時にコンプライアンスの「体制」と「意識」変革が伴わないと、その実質的な効果を生むことは難しい。「体制」とはコンプライアンス教育が進む「体制」であり、「意識」とはコンプライアンスの知識に基づく「効果」(企業倫理違反、コンプライアンス違反の減少)が上がることである。

■コンプライアンス教育の効果は上がるか
 コンプライアンス教育の効果を上げるためには、個人の知識習得を踏まえて、各部署ごとのモニタリングやチェックの日常化、そのための「監査機能」「内部報告」などの制度の強化が前提になる。ただし、こうした体制を構築したとしても、その「考え方」と「進め方」を誤ると知識は滞留し、教育効果が上がらない状態が続いてしまう恐れがある。そのため、コンプライアンス教育を上手く進めるためには、以下のような体制も必要になってくる。

1.経営陣は、外部専門家によるコンプライアンスに関する社内の客観的評価を社員に公開する
2.経営企画室やコンプライアンス委員会は、コンプライアンスを「業務」として社員に画一的に押し付けない
3.経営陣はコンプライアンス目標を明確にし、経営人自らの目標を企業目標に重ね、その方法、手段、具体的な道筋を社員に示す
4.経営陣は、コンプライアンス向上が企業の価値向上につながることを社員に伝え続ける

 こうして「教育」「体制」「意識」が歩をそろえて進むことにより、eラーニングによる教育を持続させるモチベーション(動機)が形成され、eラーニングが企業に定着する風土ができあがるのである。

 例えば、従来、集合研修を行うとなると3日以上が費やされていたが、eラーニングを系統的に行っていれば、集合研修は1日に短縮することも可能になる。基礎知識の習得と応用・実践などをすべて集合研修で行っていたものが、基礎知識はeラーニングで習得できるため、研修では応用のみを体験実習し、その応用編で得た体験を現場で実践していくというフローに変えられるからである。eラーニングで得た基礎知識が社内に蓄積されると、集合研修の成果も連動して上がるようになり、ひいては日常業務における効果も上がっていく。こうして日常業務の現場でコンプライアンスが実践されていけば、eラーニングや集合研修による教育の効果も実感できるようになる。

 このように、知識習得、体験実習、現場実践が連動することで、eラーニングに対するモチベーションも維持継続される。その結果、eラーニングの新しい教材の導入や、例えば集合研修の短縮によって削減されたコストと時間をeラーニングの方にかけて、より業務内容に密着した教材を開発することなども期待されるようになってくる。

 このような「善循環」を構築するためには、各部署と経営陣、各部署間、各部署とコンプライアンス委員会などのコミュニケーションや、経営陣とコンプライアンス委員会などの連携が向上することが前提である。そして、ステークホルダーとの関係改善や意見交流から、外部環境の変化を内部環境へと反映させていかなければならない。経営陣のみならず、一般社員が、外部環境と内部環境を橋渡しする存在であることを自覚した企業は、間違いなくコンプライアンスに強い企業に成長するのである。