■08/01/21 【第56回】コンプライアンス教育の実際 第2回

■社内コンプライアンスの現状
 社会的責任を負う企業、とりわけ上場企業は、法令、社会規範、社内規則などの「指標」を基にコンプライアンス促進の「行動規範」を文書化している。この「行動規範」は、経営者から従業員一人ひとりの「行動基準」として位置づけられている。多数の企業は企業構成員へのコンプライアンス援助の必要から「コンプライアンス推進室」を設置し、CSR・リスク管理の観点から、コンプライアンス推進体制を構築している。

 「行動規範」の内容は、以下のように分類されている。
1.規範制定目的・範囲・義務
2.国際社会・地域社会・地球環境などへの配慮と貢献
3.顧客・取引先・他社とのルール、モラルの水準
4.株主・投資家との適切な関係
5.役員・従業員間の健全な関係維持
6.会社・会社財産の保持と適正管理
7.コンプライアンスの維持と運用

 コンプライアンス教育は、この「行動規範」を一人ひとりの「構成員」に徹底するところから生ずるのである。しかし、役員・幹部社員向け(リスク管理・コンプライアンス経営)、管理職向け(推進リーダー管理養成)、監督職(推進リーダー養成)、一般社員向けというように、集合教育効果による基礎知識をただ伝達するだけでは、コンプライアンスは向上しない。したがって、当然「コンプライアンス推進室」は経営企画室の「利益・売上計画」「CS推進計画」作成などと同様に、コンプライアンス推進計画(教育計画や実施・評価・改善計画)を管理し、目標値に対する効果を計ることでコンプライアンスを向上させなければならない。

 このような「推進」体制が整い、現場各部署の「推進委員」への相談が気軽に行えるような環境(相談窓口)を維持できれば、顧客や株主に向けての企業イメージの向上と従業員のコンプライアンスに対する「評価基準」は常に鍛えられるはずである。コンプライアンス評価は、企業に属する人個々の「内面(人間性)」の評価、企業内のモラル(倫理・道徳)やモラール(社員の士気)の評価に直結することを考えると、公正な「価値基準」の見直しも随時行わなければならないのである。

■コンプライアンス教育の見直し
 「不祥事」の多くは、モラルやモラールの低下した職場に起きやすい。さらにそのほとんどは、企業をめぐる経営、金融、情報、人権、製造、環境などが「違法」状態におかれることを意味する。経営問題は会社法、独占禁止法、不正競争防止法、下請法などに対する「不正」、金融問題は手形・小切手法、割賦販売法、債権回収に関する法、外国為替と国際取引に関する法への「抵触」、情報問題は個人情報保護法、顧客管理、知的財産権、著作権法、特許法などに対する「不適応」、人権問題はセクハラ、パワハラ、学歴・人種・思想差別などの「放置」、製造問題は製造物責任法(PL法)などの「軽視」、環境問題は環境基本法の「無理解」に端を発する。

 コンプライアンス教育はこのようなリスクを排し、「諸問題」を防止するために、その導入期と定着期では教育の手段と方法が異なってくる。これは、経営陣、従業員、推進委員の三層によっても異なる。導入期における経営陣は、コンプライアンスの導入意義を理解し、社会的責任を果たすために法的知識を身につける必要があるが、定着期には、その知識を前提に社内コンプライアンス状況の把握とその分析、必要があれば他社の積極事例の検討、専門家のアドバイスを必要とする。また導入期における従業員は、「行動規範」と社内規定に対する理解、コンプライアンス教育の重要性、教育プログラムの全体像(見通し)を把握し、定着期には、職種・階層別に最新知識を身につけ、その自己評価を行う必要がある。そして導入期における推進委員は、職種(部署)ごとに一般従業員に率先して知識を吸収し、アドバイスをおこなう役割を担うことが望ましい。

 コンプライアンス教育の根幹は、経営者から従業員にいたる企業構成員内に「社会倫理」を実現することを通して国際社会、ビジネス社会、市民社会にふさわしい「公正」を確立、維持することにあるのである。