■08/01/07 【第55回】コンプライアンス教育の実際 第1回

■コンプライアンスの現状
 報道されない日を探すのが大変なほどマスコミを賑わせている「企業不祥事」。企業をとりまくグローバル化による「規制緩和」の隙間をつくかのように、突如巻き起こったようにも見える。だがそれは企業をとりまくビジネス環境が著しく変化しているにもかかわらず、企業の体質が変わっていないところから生じているのである。

 企業をとりまくコンプライアンスは、国際ルール(世界標準)・各国法令・国内法令などの「公的ルール」に従い、社会道徳(社会常識)・企業倫理・職業倫理などの「社会ルール」の影響を受け、そこから、経営理念・経営方針・社内規程などの「社内ルール」を構成し、協定・契約・他社ルールなどの「社外ルール」などとの整合性を持つことになる。

 不祥事を起こし、内部告発に揺らぐ企業に共通するのは、これら4つのルールについて形式上の「遵守」や社内「励行」を進めてはいるものの、現場の日常業務に定着していないことである。その原因としては以下の4つが挙げられる。

1.消費者ニーズ(商品開発)ばかりに目を奪われた結果、消費者自身の「社会常識」の変化に、企業が取り残されている
2.経営陣の「硬直化」により、過去の成功体験を不動の社内ルールにしている
3.ビジネス環境の変化に順応できていないため、組織が不測の事態に対応できなくなっている
4.1~3のような事態になっても、閉じた「内部改革」を主張し、外部の知恵に耳を傾けて新しいルールを導入しようとしない

 しかし、より深刻なのは、こうした前提を理解し、経営トップから「自己変革」を目指しているにもかかわらず、組織変革が滞っている企業がたくさん存在することである。不祥事や内部告発に揺れるビジネス環境ではリスクに対する恐怖が生まれ、自ら危険を冒してまで新しい試みをしようとする者は少なくなる。新しい時代には新しい企業ルールが必要であり、新しいルールを根付かせるためには「チャレンジャー」の失敗をも「評価」する企業風土が必要となるのである。

■コンプライアンスとコンプライアンス教育
 いまやコンプライアンスが企業経営に重要であることを認識しない経営者はいない。問題は、それをいかに組織全体にまで浸透させ、血や肉にするかである。コンプライアンス教育、教育システムは企業コンサルタントから提唱され、役員・幹部社員向け(リスク管理・コンプライアンス経営)、管理職向け(推進リーダー管理養成)、監督職(推進リーダー養成)、一般社員向けなどに分けられ、集合教育効果による基礎知識を社員に伝達する。また職種別の現場における具体例を学ぶことで、社員は具体的な対処方法を学ぶことができる。

 しかし、コンプライアンス教育を進める経営者本人にコンプライアンス上の「問題」があり、管理職が経営者の機嫌ばかりを窺う組織では、日頃から「企業風土」(社内の空気)を嗅ぎ分けている社員はコンプライアンス教育をひとつの「業務」とみなすことになる。一般社員はただ「研修」を受けて、報告書を提出すれば済むくらいの認識を持っているのである。企業トップ自らが企業風土・体質と向き合い、管理職、監督職とともに「自己変革」を遂げてゆくくらいの迫力がなければ、一般社員は通常業務の邪魔になるコンプライアンス」を自らのものにする気はおきない。ましてや不安定な雇用条件下にある「派遣社員」「パート社員」にまでコンプライアンス遵守を徹底させるのは至難である。不安定な雇用契約下にある「労働者」からすれば、企業経営者、管理職をはじめとする「正社員」のコンプライアンスこそ、問題にしたいという「内部告発」願望がある。

 そこで経営者は、企業の成り立ちから現在の企業風土、派閥構成・社員構成、そのバランス、待遇に現れる社員間の力関係など、表面的な「教育」と同時に「組織風土」を再考し、「どのような企業文化をつくりあげてゆくのか」を射程にいれて「コンプライアンス」を実践してゆく必要がある。経営者は社員の「選別化」と「一体化」を「適所適材化」に統合し、企業労働者が「公正感」を持てるように企業風土を改善しなければならない。