■07/10/29 【第51回】データアーカイブとその課題 第5回

■e-文書法・個人情報保護法とアーカイブ
 企業コンプライアンスの強化と企業管理コストの削減を期待し、2005年4月に「e-文書法」(「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律[第149号:通則法]」および「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律[第150号:整備法]」)が施行された。これによって、電子帳簿保存法では個別の法律要件によって異なっていた電子データ保存と紙媒体保存の区分が一括化された。

 e-文書法では、紙による文書保存から電子ファイル保存への可否が、各書類によって保存期間とともに定められている。例えば電子ファイル化可能なものでは、税務関係は3万円未満の契約書、領収書、見積書、納品書、発注書などが7年間の保存を必要とされ、医療関係では診療記録、処方箋などがそれぞれ5年間、3年間の保存を求められている。会社関係では定款、株主総会議事録、取締役会議事録、営業報告書などが、本店では10年間、支店では5年間の保存を義務付けられている。電子化に適用されないものは、損益計算書・貸借対照表、高額領収書、船舶・車両の安全手引書類、運転免許証など約50の法令にかかわる文書である。

 個人情報保護法では、公共団体・企業などが入手した個人情報に関する取り扱いを定めている。その原則として以下の5項目が示されている。

1.利用方法の制限(利用目的の本人への明示)
2.適正取得(利用目的に対する本人の了解による取得)
3.正確性確保(正確な個人情報の保持)
4.安全性確保(紛失・流出・盗難の防止)
5.透明性確保(本人の閲覧、本人への開示、本人申し出による訂正、同意なき目的外利用の本人申し出による停止が可能)

 これらの「電子情報」に関する二つの法律は、企業内情報の「開示情報」と「機密情報」の意味をより明確にすることになった。e-文書法に該当するデータは、開示可能性を前提にされた情報であり、個人情報保護法に該当するデータは、基本的に不特定多数への公開を前提にしない蓄積情報である。企業情報のアーカイブ化は、日本版SOX法と連動した企業の情報管理力の強化をも前提にしているのである。

■データアーカイブの社会的意義
 日本のデータアーカイブに関する取り組みは、1960年代からその二次利用の意義について議論されてきた。しかし実情は1991年に世論調査協会の「世論調査データ機構設立趣意書」のデータアーカイブ構想を待たなければならなかった。

 データアーカイブの社会的意義は、

1.過去調査データや研究データの保存、散逸の防止
2.系統的な過去データの所在の明確化による無意味なデータ集積の防止
3.既存データの利用によるデータ収集の時間的・経費的負担の軽減

にある。企業におけるアーカイブは、このような学術・研究アーカイブの一般的な考え方に対して、主として企業内部情報と外部収集情報の管理を目的にしている。

 しかし、企業の中長期に渡る経営戦略や戦術の立案を行う経営リーダーにとって、社外に蓄積されているアーカイブ利用は必要不可欠である。経営リーダーは企業内部のアーカイブ構築とともに、マーケット・リサーチ会社や官公庁、公共団体のアーカイブ利用についてもその認識を深める必要がある。例えば社団法人日本マーケティング・リサーチ協会の「規程」によれば、データの保存期限は1年間であり、調査依頼した企業に対する一定の情報開示期間を過ぎると電子ファイル、リファレンスデータは廃棄されてしまう。当然のことながら、企業が系統的に外部情報を収集するのであれば、外部アーカイブの現状に対応して独自のアーカイブ戦略を求められることになる。国勢調査レベルでの基本データ、産業経済的データは別にしても、個別企業では負担が大きい場合、個別業界の基礎情報や応用データの管理・保存は業界共通の「財産」として共通利用可能なアーカイブ化を、業界関連団体が整備する必要がある。

 このようにアーカイブ利用は、「既存データの利用によるデータ収集の時間的・経費的負担の軽減」という観点からみれば個別企業の問題であるが、その社会的意義から判断すれば企業共通の問題ともなりうるのである。