
■ITIL導入後の問題意識
ITIL運用管理を、その構成要素についてそれぞれ解説してきた。しかし、それらの管理項目を網羅するようにITILを導入したものの、各部門によって、そのポイントや進展が異なるために、統合的なITILの全体像や目標がぶれることも懸念される。最終回である今回は、このITIL全体像の見直しをしてみたい。
ITILの各管理項目の関係は、次のようになる。
まず、このような重層関係を前提としてITIL展開計画が策定されていることが重要である。次に、現状を把握し、それに基づいて以下のことを行う必要がある。
このITIL全体の再構成では、サービスマネジメント実行計画と並行して、情報システムを管理、統制する。経営戦略やビジネス展望から導かれたシステム計画(アプリケーション・ICTインフラストラクチャーマネジメント)はITILの可用性管理・キャパシティ管理と連動し、また資産管理計画(ソフトウェアアセットマネジメント、セキュリティマネジメント)はITサービス管理・IT財務管理と連動しているからである。
つまり、これらの計画がITILの日常運用におけるサービスの維持・向上機能(リリース管理・インシデント管理・問題管理・構成管理)を統制しているといえる。このITILの日常運用は、ユーザサービスレベル管理を通して、絶えずサービスマネジメント計画全体に反映される。各管理項目の連携と相互調整があって、はじめてITIL運用プロセス全体の効果、効率アップ、導入効果が表れるのである。
■ITIL推進体制、役割の見直し
ITILを運用するのは、紛れもなく人である。ITIL導入時に組織されたシステム担当、管理担当、体制構築担当などの各担当を統括する推進責任の役割分担や機能、実行の精度は、当初の計画に比べてどのくらいの効果を生んでいるだろうか。
ITILがスムーズに運用されるためには、管理プロセスごとの「企画・計画」「統制・管理」「実務」について定期的な見直しがされなければならない。管理プロセスの機能・方針・役割分担を決定する「企画・計画」、方針に基づいた管理プロセスが正確に運営されていることを監視する「統制・管理」、管理プロセスを方針に沿って運用する「実務」それぞれにおいて、内部での見直しはもちろん、各機能間の情報伝達がうまくいっているかを検討することが重要である。
検討の結果、効率や効果を考慮して、ユーザと直結するITサービス部門そのものをアウトソーシングする場合も出てくるだろうが、その場合でも、「企画・計画」機能は自社で取り扱うべきである。「企画・計画」部門はただ立案策定するだけでなく、ユーザ満足度の反映、新たなビジネス要素の発掘、費用対効果の情報開示など、ITIL戦略からIT戦略、さらには経営戦略やビジネスモデルにまで深く関係するからである。「統制・管理」部門でアウトソーシングする場合でも、管理項目に基づく報告内容の調査分析、指示命令系統は、自社機能を働かせた方がよい。
各部門では管理項目ごとに指標を設け、ユーザからフィードバックされたデータ(満足度)に照らし合わせながら、指標そのものの見直しも含めた改善計画の策定、実行が必要となる。このような改善は、いわゆるPDCA(マネジメントサイクル)に基づき、継続的に取り組むことで効果が期待される。それは、ITIL導入初期にとられた推進体制が、形骸化しないために最低限必要な管理機能なのである。