■07/01/15 【第31回】ITIL導入 運用管理定着の実際 第1回

■IT化戦略あってのITIL導入
 高度情報化社会の到来により、日常生活にも、企業活動においても、コンピュータネットワークの利用は欠かせないものになった。特に企業における情報サービス提供には、情報システムの構築およびITIL(IT Infrastructure Library)の導入が欠かせない状況にある。だが、ITIL導入以前の問題として、企業のビジネス展望や業務へのIT活用、IT導入によるスケールメリットなどの経営戦略に基づいたIT企業戦略がなければ、ITIL導入は砂上の楼閣になりかねない危険性をもっている。


 ITの本質は情報ネットワークにあり、情報を大量に、安く、的確に入手でき、しかも高速度に取捨選択する「可能性」を入手することである。従来は組織内での情報集積や社内コンセンサスの構築を軸に対外的活動を行っていたが、今では各人が情報ネットワークを利用して、グローバルかつ「最大効率」の情報活動を行うことが可能になったのである。コンピュータネットワークを媒介にして情報活動のスピードがアップすることで、ニーズとシーズはめまぐるしく変化し、さらには情報の蓄積化、データベース化が進むことで、ニッチの発見もしやすくなる。こうしたビジネスチャンスを見逃さないためにも、IT化は企業戦略(経営戦略)展開そのものの手段であり、新たな戦略を生み出す方法の一助となりうるのである。しかし前述の通り、企業戦略(経営戦略)なくしてIT戦略、さらにITIL導入もないことは言うまでもない。

■ITIL導入の目的と目標
 企業の課題は、経営課題に取り組みながら、業務の標準化と効率化を繰り返し行い、人・モノ・金という経営資源を巧みに配置・投下しながら顧客満足度をアップし、ひいては高収益体質を構築していくことで、いかに持続可能な経営を行うかにある。従来の情報システム開発の多くは、既存の業務プロセスをそのまま情報システムに置き換えるだけであり、いたずらにコスト高を招く傾向にあった。

 ITILを導入するにあたり大切なことは、

1.ITIL導入の意義、目的、目標を共有すること
2.現状の業務レベルおよび改善点を知り、その情報を共有化すること
3.IT部門、IT活用、ITサービスの高度化を可能にする目標と、その実現プロセスを具体化すること
4.業務改善の実際と経営課題とのすりあわせから、ITIL導入の優先順位をつくりあげること
5.1の目標を達成するために、中長期計画を詳細化すること
6.導入成功のための組織体制、推進責任体制を設け、プロセス評価を常時おこうなうこと

である。

 IT化とITIL導入の違いは、IT化があくまでも社内システムの効率化、管理化を目的にしていたのに対し、ITIL導入はIT化を前提とし、ITを問題解決の手段として運用管理することにある。このITIL導入の目標は、ユーザへの「サービス提供」「ITサービス」の充足にある。情報セキュリティ保護、不正アクセス防止、個人情報保護などの行政からの要請や、アウトソーシングなどのコスト面、セキュリティ面からの社内要請を踏まえ、IT環境の一般化と多様化(ニーズ)に対応することで、企業とユーザの多面的な情報接触や情報共有化からもたらされるユーザの要望に、スピーディかつ的確に応えられるようになるのだ。

 従来のITサービスでは、サービス提供者の都合によって、ユーザからのサービス要請や苦情要請などが部門ごとに管理・対処されていた。そのためユーザに対し、ややもするとスピーディではない対応がされていた。こうしたサービスは、各種アプリケーションやインフラを含めた一元管理を行うことによって、現場でのすばやい情報の引き出しや、ユーザに対する系統的な対応が可能になり、サービスの質が向上するのである。

 ITサービスの品質向上、成功の鍵は、ユーザに対して恒常的にサービスを改善していくことを明確にすることである。そのためには、アプリケーション開発・保守側とアプリケーション運用・ITサービス提供側との間に摩擦を生まないように、ITサービスの品質責任をサービス提供側が負うべきである。ユーザは企業の内部事情など知らない。ユーザは多面的な接点のひとつとして、ITサービスから企業リテラシーを見ていると考えた方が良いだろう。