■06/09/19 【第23回】情報ネットワーク社会から顧客を賢く守る 第7回

■電子商取引契約の有効性
 電子商取引では、事業者と消費者の契約内容は「約款」に定められている。しかし現実には、この「約款」をよく読んで契約にいたる消費者はあまりいないと思われる。消費者は、「約款」(事業者の「免責事項」)が流通保護上、自分たちにかかわる「重大事」であることなどあまり考えないに違いない。


 インターネット・プロバイダー事業者の約款には、ID・パスワード管理の会員(消費者)責任、すなわち他者によるID・パスワード不正入手による消費者被害は消費者の責任であり、ID・パスワードが一致している限り「本人」と判断することを記している場合が多い。しかし、そこにはID・パスワード管理者本人の意思表示はないのだから、当然消費者に責任はない。平成13年4月1日に施行された消費者契約法は、このような事業者と消費者の「力関係」を見直し、事業者の行為によって消費者が誤認し、困惑した場合について、契約の申し込み、承諾の意思を取り消すことができるようにしたことで、消費者の利益を擁護する立場にいたった。

 よく経験することに、購入したソフトウェアをインストールする際に、事業者の免責事項に繰り返し合意を求められ、合意しなければインストールできない仕組みになっているものがある。合意事項(免責事項)は長文のため、すべてを読む消費者は大変少ないことが予想される。「本ソフトウェアを使用してパソコンに不具合が生じてもソフトウェア開発者は一切責任を負わない」などの条文に同意したくなくても、インストールを終えれば、この免責事項を認めたことになるのである。しかし、このような場合でも、民法の公序良俗に反する立場から、消費者契約法は適用されるのである。

 このように、消費者は消費者契約法によって守られるが、トラブルが起きていざ訴訟に発展した場合、この電子商取引上での「電子データ」(パソコン画面上での契約)は、民事訴訟法231条により「準文書」扱いとなり、アウトプットされた「紙媒体」による契約書が必要とされる問題点が残る。消費者の知恵として、信頼性の低いネットショッピング上でのトラブル回避のために、商品に添付する形で「紙媒体」による契約書を入手する必要も出てくるのである。

■電子商取引と認証制度
 対面販売をとらない電子商取引では、電子データの作成者・意思表示者が誰であるかを認定する「認証制度」と「法制度」の整備が、今後ますます進むことが予想される。「認証」とは、通常、現実の取引において公証制度、住民・印鑑登録制度、郵便制度を利用して「本人特定」をおこなうことである。コンピュータネットワーク上で契約内容・意思表示・配達記録・日付記録などを「認証」する公的機関ができれば、取引当事者双方が「取引」そのものを信頼することが可能になる。現在、暗号技術を利用した「電子署名」が使用されているが、電子データを暗号化する電子鍵の保管や承認を公的に認証できれば、電子データが特定の者からの送信であることを確認することができる。

 電子署名・電子認証制度を整備する目的で、平成12年5月31日に電子署名法が公布され、電子署名の法的効力が定められた。電子署名法は、通常の取引の押印・印鑑証明書が果す役割を、秘密鍵によって暗号化された電子署名に認めたものである。国の認定を受けない業者でも認証業務をおこなうことができ、その効力についても法的差異はないものとされている。重要なのは、電子データを暗号化し、複合化する電子鍵の管理である。電子鍵の管理が困難である場合は、電子署名上の「本人の特定」は危険にさらされているのも同然で、安全性を確保しているとは、到底言うことはできない。

 電子鍵はICカード化して本人が携帯し、それを使用しない限り電子署名を送ることができないような管理が必要である。しかし、ICカードが盗難にあう可能性もある。現在では、印鑑の代用として拇印があるように、人の指紋を電子鍵の代わりに活用する方向で技術研究が進んでいる。人間の指紋が電子鍵の代わりになるか、今後の法整備が期待されるところである。