
■電子商取引上の発注トラブル対処
電子商取引は、その取引形態が直接対面販売ではなく、販売者、利用者ともに匿名性が高いという特徴のために、法制度網からもれたトラブルを生むことがある。トラブルの原因は、システム障害による販売者と利用者の「錯誤」、販売者、利用者双方の「詐欺」「脅迫」行為が主なものである。一般に匿名性の高い「商取引」である電子商取引も、対面販売と同様に、売買契約によって商品の所有権の移動と代金支払義務が生ずる。法的効果が、販売者と購入者の「意思」の一致により生ずるのである。こうした考え方は「意思主義」といわれ、民法や商法はこの考え方を基本にしている。しかし、契約上、販売者と購入者の意思が形式的に一致しているようで、実質的には食い違うことも多々見られる。
例えば、購入者の入力ミスによる二重発注や、商品指定ミス、契約条件の誤認などである。電子商取引において入力ミスは、一般には「記入ミス」「言い間違い」と同じく、表示上の「錯誤」となる。またあるキーを押したが、そのキーの意味を誤って理解していた場合は、「言葉の意味」を正しく理解していない場合と同様、内容の「錯誤」となる。表示上の錯誤、内容の錯誤もともに商品違いや数量違い、価格違いに関する「法律行為の重要な内容」、すなわち「要素」の錯誤となりうる。電子商取引上で気をつけることは、対面販売であればこうした「錯誤」による売買契約は無効になるが、電子商取引上のキー操作ミスは「過失」と認定され、契約は無効とされない可能性が高くなるのである。(民法95条但書)。
しかしながら、キーボードという操作ミスがおきやすいシステム、購入者が事業者(販売者)の設定したシステムに従わざるを得ない環境を考慮した場合、電子商取引上の過度に煩雑で複雑な「入力」システムの改善、理解しやすい操作方法の開示などを、事業者はおこなわなければならないだろう。実際、発注システムが複雑なため、操作ミスで同一商品の二重、三重発注をしてしまい、多重請求をされてトラブルになるケースが目立つ。平成13年には、こうしたトラブルの回避を目的とした電子消費者契約法が成立し、事業者が申込者の操作ミスを防止するために「意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置」(電子消費者契約法第3条)をしていない場合、申込者に過失があった場合でも、操作ミスによる意図しない契約を無効とする措置がとられている。
■電子商取引における詐欺・脅迫とシステム障害
電子商取引上の詐欺行為でも、対面販売と同じように、販売者がはじめから販売する気がないのに購入者を勧誘し、商品を送らずに代金を騙しとる場合と、購入者が商品を受け取った後、代金を販売者に支払わない場合がある。この場合は、電子商取引上の「顔をあわせない」売買契約であるが、直接関係にあるため、トラブル解決に比較的乗り出しやすい。困難な場合は、事業者と利用者の間に「善意の第三者」が入っている場合である。例えば、キャッシュカード発行会社のホームページを装い、暗証番号を利用者に入力させて盗み取る「フィッシング詐欺」や、スパイウェアによってキャッシュカード情報の盗み取られる場合がある。こうして盗まれた情報で買い物などをされても、利用者は「善意の第三者」であるインターネット・プロバイダやキャッシュカード発行会社に、損害賠償の申し立てはできない。Webのネットサーフィンなどでホームページを閲覧する際には、商品を購入する、しないに関わらず、事業者の約款や説明表示などがない場合は近づかないように心掛けたほうがよい。特に怪しいサイトでは、スパイウェアなどを仕掛けられる危険性もある。
脅迫行為も、電子商取引において、多々存在する。これも対面販売同様、民法の範囲内で対処できる。ただし、対面販売と異なり、お互いの「顔」が見えない状況での取引のため、販売者と購入者の「脅迫」観念に対する温度差があることから「脅迫」を感じた者によって売買契約を解除することが可能である。システム障害が原因によるトラブルは、申込者の発注データに対する販売者の承諾データ通知をプロバイダが消失した場合は、インターネット・プロバイダ事業者の責任となる。逆に、申込者が販売者からの承諾データを消去または削除した場合、無意識な行為であっても、その責任は申込者にあるということがいえる。